内祭について

神殿祀り


家庭の神様

家庭の神様
家庭の中には、さまざまな神さまと同時に、家のご先祖もまつられています。そこで、家の中にはいったいどんな神様がまつられているのか、また、神さまとご先祖さまはどんな関係があるのか、簡単に説明してみましょう。

大黒様と恵比寿様

家庭の中の神さま
まず、古来、家庭の中にはどんな神さまがまつられてきたか考えてみますと、
  • 毎年お正月にだけおまつりする歳神(としがみ)さま
  • 農家や商家などでとくにおまつりする大黒(だいこく)さま、恵比須(えびす)さま
  • 台所に竃(おかま)さま
  • 井戸に井戸神さま
  • お便所(かわや)に厠神さま

など、あげていけばきりがありません。古い農家などでは、これらのすべての神々を祀っている場合もあります。ただ、これらの神さまは、特別に神殿を設けず、お神札を直接柱にはったり、井戸そのものにお供えしたりしておまつりする場合が多く、神殿とはいえないことがあります。もちろん立派な神殿にまつられている場合も少なくありません。

一般に神殿と呼ばれるのは伊勢神宮のお神札や氏神さまの神札をまつる神殿のことで、神殿といえばたいていこの棚のことをいい、伊勢神宮の御璽をまつるところから大神宮ともいいます。この神殿には、最も身近な氏神さま、産土神(うぶすながみ)さまもあわせて祀り、それぞれの家庭が特別に信仰している神社のお神札なども祀ります。こうして、家族一同の安泰を祀るのです。

氏神さまと産土神さま
もともと氏神さまは血縁関係のある一族の神さま、産土神様は生まれた土地やその地域の人々を守って下さる神さまとされていました。今日ではそうした区別をあまりせず、私たちが住んでいる地域や人々を守ってくださる神さまを氏神さまと呼んでいます。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)

ところで、なぜ神殿に伊勢神宮のお神札が必ずまつられているのかといいますと、私たちの住むこの日本は、この天照大御神(あまてらすおほみかみ)の神徳(しんとく)によって秩序づけられ、発展して来た国だからであります。しかも、これらのことが単なる神話ではなく、実際の生活の中に今も生きているからであります。皇室でのおまつりも、伊勢神宮のおまつりも今日まで絶えたことがありません。

加えて、中世以来の伊勢神宮に所属した御師(おんし)(神宮に参拝する人々の案内や宿泊の世話、お祓い、お神札配りなどを職とした)の活躍はめざましいものがあり、全国いたるところまで足を運び、神宮大麻を配って歩いた努力も見逃すことができません。こうした事から、神殿を祀る家庭では、天照大御神にまず、祈りをささげるという信仰が生まれ、今日でもそれが受け継がれているということは素晴らしいことといわざるをえません。

ご先祖さま

これに加えて、どこの家庭でも必ず祀っているのがご先祖さまです。ほとんどの家では、江戸時代の檀家制度のなごりで、宗旨の違いはあるにしても仏壇で祀っています。あるいは神式で、御霊舎(みたまや)に祀っています。ご先祖さまは仏式で仏さま、神式では神さまと呼び、祀る形式こそ違いますが、要はご先祖さまを祀ることには変わりがありません。

このご先祖さまの御霊と神社や神殿に祀る神々との関係は、普通こんな風に説明されています。亡くなった人の供養や慰霊の祭は33回忌(仏式)30年祭あるいは50年祭(神式)を最後とする場合がほとんどで、これを「まつりあげ」と呼んでいます。長い年月がたつと、ご先祖は鎮守の森に帰られるとも、高い山に居られるとも地方によっては、様々の信仰がありますが、いずれにしても末長く私たちを御守護下さると信じられています。家庭の中に祀られる神さまやご先祖さまの関係は、こうした日本古来の考え方から生まれ、受け継がれていることがお分かりいただけたと思います。